味わいは味覚だけではない! コーヒーの歴史⑶ エチオピア

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本日はコーヒーの発祥の地とされるエチオピアについてまとめてみました。エチオピアのコーヒーは花や果実を思わせる香味が多く、個人的には一番好きな生産国です。

コーヒーの起源とされるエチオピアは、単なる発祥の地にとどまらず、今もなお コーヒー文化 が深く根付いている国です。エチオピアでは、コーヒーは日常生活の重要な一部であり、伝統的な 「コーヒーセレモニー」 や特別な食文化とも結びついています。

1. エチオピアにおけるコーヒーの起源

コーヒーの起源にはいくつかの説がありますが、最も有名なのが前回にも登場した 「カルディの伝説」 です。

カルディの伝説(9世紀頃)

エチオピアのアビシニア高原に住んでいた羊飼い カルディ(Kaldi) が、ヤギたちが赤い実を食べた後に興奮して跳ね回る様子を見ました。不思議に思ったカルディがその実を試したところ、自身も元気になったため、近くの修道院の僧侶に持ち込みました。

僧侶たちは最初はその実を危険視し、火に投げ入れました。しかし、焙煎された豆から良い香りが漂ったため、試しに煮出して飲んでみたところ、眠気を防ぐ効果があることが分かり、それ以来コーヒーが広がったとされています。

この伝説が本当かどうかは不明ですが、エチオピアでは 何世紀にもわたってコーヒーが飲まれてきたことは確か です。

2. エチオピアのコーヒー文化と伝統

コーヒーセレモニー

エチオピアではコーヒーは単なる飲み物ではなく、社交の場を作る大切な文化 です。その象徴が 「コーヒーセレモニー(Bunna Ceremony)」 です。日本でいう茶道に似た雰囲気の儀式で、来客をもてなす際に行うようです。

セレモニーの流れ

  1. 生豆の準備:新鮮なコーヒー豆を手で選別し、汚れを取り除く。
  2. 焙煎(カリオモン, Kariamun):鉄製の鍋で生豆をじっくり焙煎し、香ばしい香りを楽しむ。
  3. 粉砕:伝統的な石臼や乳鉢で焙煎した豆を細かく挽く。
  4. 煮出し:エチオピアの土器 「ジャバナ(Jebena)」 でコーヒーを煮る。
  5. 提供:小さなカップで3回に分けて提供される。
    • 1杯目(アボル, Abol):最も濃厚で力強い味。
    • 2杯目(トナ, Tona):少しマイルドになる。
    • 3杯目(バラカ, Baraka):薄めのコーヒーで、飲むと「祝福」を受けるとされる。

このセレモニーは 1時間半から2時間 かかることもあり、ポップコーンなどをおやつに談笑しながら楽しむゆったりとした儀式です。


エナジーボール

エチオピアには、コーヒー豆を使った特別な食文化もあります。その一つが 「エナジーボール(Buna Qela)」 です。

特徴

  • コーヒー豆を焙煎し、バターやスパイス(塩、ショウガ、カルダモンなど)と混ぜる。
  • 小さく丸めたボール状のスナックとして食べる。
  • コーヒーのカフェインとバターのエネルギーで、長時間の活動に備える。

この食文化は、エチオピアの高地で生活する人々が長い移動や労働の際にスタミナを補給するために生まれました。

3. エチオピアのコーヒー品種と特徴

エチオピアは アラビカ種(Coffea arabica)の原産地 であり、野生のコーヒーノキが今も多く生息しています。世界のコーヒーの多くはエチオピア由来の品種です。

エチオピアでは、伝統的に 森の中で自然栽培 される「フォレストコーヒー」や、小規模農家による「ガーデンコーヒー」が主流です。化学肥料や農薬を使わず、自然に育ったコーヒーは 複雑な風味と香り がするようです。

またエチオピアのコーヒーは、産地ごとに異なる風味 を持つことで有名です。特に ハラー(Harrar)、シダモ(Sidamo)、イルガチェフェ(Yirgacheffe) は、エチオピアを代表する主要な産地名です。

4. エチオピアの主要なコーヒー産地

エチオピアは世界でも特に多様なコーヒー品種を持ち、地域ごとに異なるフレーバープロファイル を生み出しています。

① ハラー(Harrar)

📍 産地:エチオピア東部のハラー地方(標高1,500~2,100m)
特徴

  • 天日乾燥(ナチュラルプロセス)による ワインのような風味
  • チョコレートやスパイスのようなコク
  • フルーティーな香りと甘み

ハラーコーヒー はエチオピアの中でも古くから知られた伝統的な品種で、「モカ・ハラー」としても有名です。

② シダモ(Sidamo)

📍 産地:エチオピア南部のシダモ地域(標高1,500~2,200m)
特徴

  • 柑橘系の明るい酸味
  • フローラルな香り
  • バランスの取れた甘みとボディ

シダモ地方はエチオピア最大のコーヒー生産地の一つであり、エチオピア産コーヒー全体の約30%を占めています。

③ イルガチェフェ(Yirgacheffe)

📍 産地:シダモ地域内のイルガチェフェ地区(標高1,700~2,200m)
特徴

  • 紅茶のような繊細な香り
  • ジャスミンやベルガモットのフローラルな風味
  • 透明感のある酸味

イルガチェフェはシダモ地域の一部ですが、特に品質が高いことで独立したブランドとして扱われます。「モカ・イルガチェフェ」として世界的に人気があります。一度は聞いたことがあるのではないでしょうか?

おまけ: カリオモン(Kariamon, Kuti)とは?

カリオモンは「コーヒーの葉茶」

「カリオモン(Kariamon)」は、エチオピアの一部地域で飲まれている コーヒーの葉を使ったお茶 のことです。

特徴

  • コーヒーの葉を乾燥・焙煎して煮出す。
  • 一般的に ジンジャー、バター、ハチミツ などを加えて味付けする。
  • カフェインは少なく、抗酸化作用があるとされる。

エチオピアでは「クティ(Kuti)」とも呼ばれ、特に農村部で親しまれています。コーヒー豆を焙煎する通常のコーヒーとは異なり、より お茶に近い風味 を持ちます。

コーヒーセレモニーにおける「カリオモン」

一方、エチオピアの伝統的なコーヒーセレモニーでは、焙煎する工程を「カリオモン」と呼ぶこともある ため、混同されることがあります。

さて、いかがでしたでしょうか。コーヒーについて調べるにあたって、「カリオモン」という見慣れない言葉もでてきましたね。この歴史や文化を学ばなければ、知らなかった単語です。ご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、実は長崎県にカリオモンズコーヒーロースターというスペシャルティーコーヒー専門店があります。長崎県によられた際にぜひ足を運んでみてください。今回学んだコーヒーの歴史とともに、美味しいコーヒーがいただけます。

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